今回の限定朱印 その1
「鬼-Oni-」
今年もやります限定朱印。
令和3年秋の特別公開限定朱印は「鬼-Oni-」です。
妙顕寺には鬼子母神という鬼の神様が祀られております。
天皇もお参りしていたことから「天拝 鬼子母神(てんぱい きしぼじん)」と呼ばれております。
その神様を漢字一文字で表現しました。
もともと鬼子母神は、とても美しい神様で、500人の子どもがいました。
しかし、愛する自身の子を養うため、人の子を喰う怖い鬼でもありました。
人々から相談を受けたお釈迦様は、一計を案じ、鬼子母神の可愛がっていた子を神通力によって隠してしまうのです。
愛する我が子を失った鬼子母神は嘆き悲しみました。
涙を流しながら世界中を探し回りますが、神通力によって隠された子を見つけられるはずもなく、途方に暮れついにお釈迦様の元に行き「愛する我が子が居なくなり見つからない」と助けを求めました。
お釈迦様は言います。
「命の大切さ。子どもが可愛いということ。
それは人であっても、鬼であっても何一つ変わりはしない。
今のおまえにはわかるのではないか?」
そして隠していた子どもを鬼子母神の元に返しました。
お釈迦様に諭され改心した鬼子母神は、お釈迦様に誓いを立てます。
「私は人の子を守る。私はお釈迦様の教えを信じる者を守る。」
その瞬間、頭から鬼の角が落ち、鬼神から善神へと生まれ変わるのです。
多くの寺院で鬼子母神の「鬼」の「ノ」という角の部分を書かないのはそれが理由なのです。
この鬼子母神の物語は、私たち人間にも同じことが言えるのではないでしょうか。
人を傷付ける鬼の心もあれば、お釈迦様のように人を救済する心も備えているのが我々人間と言うものです。
善人から悪人へ。悪人から善人へ。どちらにも転びえる、人の心とはままならないものなのです。
不正を報道するニュースを見て、批判の言葉を発しているとき、あなたも鬼のような形相をしているかもしれません。
罪を犯す人間の多くは自覚がないものです。いつ魔が差すかわからない。
ただ不正を糾弾するのではなく、自分もそうなり得る可能性があるのだと「明日は我が身」であるとそこから学びを得ること。
戒めをもって生きることが大切なのではないかと思います。
今回の鬼の文字では「ノ」という角の部分を通常通りに書くことはなく、逆に完全に取り払うこともないように書いています。
それは、どちらにも傾きうる不安定な私たちの心を表しているのです。
また、鬼子母神が手に持つ柘榴(ザクロ)には沢山の実(種)があります。
元々子宝に恵まれていた鬼子母神の象徴であり、子どもを守る「子孫繁栄」を表すものでもあります。縁起が良いので「吉祥果」などとも言います。
今回は天然ヒノキを紙に張り付けた特殊な紙に「鬼」の文字を記し、吉祥果の朱印を押しています。また、酸味と花の甘さを連想させるザクロの香りが漂うよう香り付けた「香り漂うご朱印」となります。
最後に限定朱印「鬼-Oni-」のラフ画像を載せておきます。
限定朱印は枚数に限りがありますのでお早めにどうぞ。
また、全てのご朱印に言えることですが、書き手によって文字の書き味などが変わります。何卒ご理解の程お願いいたします。
【特別公開の日程詳細】